メアリー・コース
「Painting with Light (光で描く絵画)」

2022年10月13日(木)- 12月10日(土)
※予約不要
開廊時間:12:00 - 18:00
※日・月・火・水・祝日 休廊

会場:SCAI PIRAMIDE

コースは60年近くにわたり、空間に射す光と知覚をめぐる試行を続け、自身の求める抽象表現の実現に打ち込んできました。幾何学的な構図に基づき、参照性を持たない彼女の絵画は、量子物理学から現象学に至る幅広い分野を読み込み、光と物質の特性を探究することにより鑑賞者の知覚を呼び起こします。 絵画に光をもたらす素材を模索していた1960年代後半、コースはキャンバスにガラス製マイクロビーズの層を加える技法にたどりつきます。彼女にひらめきを与えたのは、カリフォルニアの海岸線に沿って走るパシフィックコースト・ハイウェイの車道に引かれた白い境界線が、沈みかかる夕日に照らされる光景でした。光をキャンバスに統合しようとする試みはその後も続き、知覚される絵画空間の限界を押し広げるコ ースの光り輝く平面となって結実しています。

コースの最新作が一堂に会する本展は、「Painting with Light(光で描く絵画)」と題されています。永遠性と親密さを同時に感じさせる彼女の絵画には、光の反射と屈折の相互作用によって現れては消える幅の異なる光の帯が現れ、白いモノクロームのグラデーションと黒色で区切られたその垂直の帯が、絵画空間における段階的な差異と「現実感」の高まりを強調しています。鑑賞者が絵画に沿って歩くと、キャンバスは光の屈折による複雑な表情を見せ、視点の位置によって変わる知覚の主観的な性質を明らかにします。そして、細やかな姿勢の変化が絵画との絶え間ない対話をはぐくみ、鑑賞者の身体とキャンバス、その双方を包む空間に新たな関係性を吹き込んでいきます。

コースは、1960年代のカリフォルニアで、当時流行していた幾何学的な抽象表現やミニマリズの厳格な形式を背景に生まれた「ライト&スペース」というムーブメントに関連づけられ、近年世界的に再評価が高まっているアーティストの一人です。「ライト&スペース」は、ガラスビーズなど透明、半透明、または反射素材を用いたり、オブジェや建築物に直接光源を埋め込むことで、光をメディウムとした知覚現象に焦点を当てたことを特徴としています。この潮流と同時代に制作をしていたコースですが、「ライト&スペース」で知られる他のアーティストからの影響や交流は限られており、自らの手法を独自に発展させたといいます。長く知られることがなかったその歴史的背景は、近年刊行されたカタログにおいて詳説されています。

メアリー・コースによる絵画シリーズを紹介する展覧会「Painting with Light(光で描く絵画)」は、ア ーティストの60年近くに及ぶキャリアにおいて日本で発表される初の機会となります。

Mary Corse, Untitled (White Inner Band, Beveled), 2022, glass microspheres in acrylic on canvas, 127 cm× 127cm× 10.2 cm Photography: Flying Studio, Los Angeles © Mary Corse, courtesy Pace Gallery
Mary Corse, Untitled (White Inner Band, Beveled), 2022, glass microspheres in acrylic on canvas, 127 cm× 127cm× 10.2 cm
Photography: Flying Studio, Los Angeles © Mary Corse, courtesy Pace Gallery