土屋信子
"30 Ways To Go To The Moon"

2018年5月29日(火) - 7月14日(土)

アンテナ、プラスチック・チューブ、吊り下がったフェルトやガラスのビーカー、謎の液体に濡れた大きな浴槽、卵を孵化させるような電子ワイヤーの接続̶。多くは廃品である素材との偶然の出会いから、詩的な精密さによって生まれる土屋信子のアッセンブリッジは、直感に突き動かされた原始的な発明のように、そして未来のノスタルジーを育むSF小説の一ページのように立ち上がります。自在に変奏するアイデアの数々は、あらゆる決めつけに対する凶暴な反逆であり、理性によるコントロールを離れ、言葉にならない思考の先を疾走する感覚への取り組みとも言えるのではないでしょうか。

「30 Ways To Go To The Moon」(月へ行く30の方法)では、月という身近な未知に到達するための数々の秘策が、展示空間に惜しげなく放たれます。底知れない宇宙の独創的なストーリーを展開する土屋作品は、危険な化学実験のように、「いろいろな考え方」を調合して爆発する無限の可能性を垣間みせるでしょう。こうした想像力の源として、土屋は地下に栄える「魚文明」なるものを想定し、そこから様々なアプローチを発展させています。例えば昨年、駒込倉庫で行われた個展では、メキシコのフードマーケットで行ったパフォーマンスの体験をもとに、魚達からのプレゼント「月に行けるゼリー」や、サボテンの毛のような「ふわふわ飴」のおもてなしで、プライベートスペースを創作。素材の質感にまでいきわたるユーモアが、あらゆる人々が共有する記憶や感覚をくすぐり、圧倒的なフィクション世界へと解き放たれていきます。