アレックス・カッツSummer 172023麻に油彩121.9×182.9 cmAlex Katz is represented by GRAY Chicago/New York
アレックス・カッツ
Summer 17
2023
麻に油彩
121.9×182.9 cm
Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York

アレックス・カッツ
「Four Seasons」

2025年8月29日(金)ー10月18日(土)
※予約不要
開廊時間:12:00 - 18:00
日・月・火・水・祝日 休廊
会場:SCAI PIRAMIDE

ニューヨーク・ブルックリン出身のアレックス・カッツ(1927年生まれ)は、具象と抽象の間を軽快に行き来するペインターとして知られています。そのシンプルな構図における確信的なフォルムと情感の豊かさは、ビビッドな色彩と象徴的なイメージの使用によって増幅し、モチーフの特徴を明確かつ鮮烈に描き出します。そうすることで、なにげない日常の情景を永遠の瞬間に昇華させ、観客に直接的で親密な体験を与え続けてきました。その約80年にわたる輝かしいキャリアは、新写実主義(アメリカンリアリズム)とポップアートにおけるカッツの地位を確立させ、その後に続く世界中のアーティストたちに影響を与えてきました。


2022年に始まった最新シリーズ「 Seasons」 では、四季の移ろいを即興的な手法で捉え、iPhoneで撮影したスナップショットと簡単なスケッチから、広いキャンバスへと変換されます。「夕日を描くときは、15分でスケッチします。つまり、その瞬間の記憶からスケッチを描き起こすのです。」とカッツは語ります。地平線をとり除くことで空間の制約から解き放たれたキャンバスは、力強いフォルムと色彩の世界に鑑賞者を没入させます。修正を重ねるのではなく即時性を優先し、直感に導かれたカッツの絵画は、しばしば一朝のうちに仕上がるといいます。スピード、記憶、そして自らの眼力を信じるこのプロセスは、知覚を時間的な行為と捉えるというカッツの信念を反映しているといえるでしょう。


カッツはかねてから、風景を包み込む光と空気を瞬間的に捉える作風に取り組んできました。オートマティスム的な手法で描き起こすスケッチから、絶えず変化する自然の魅力に触発されたキャンバスまで、連作「Seasons」が意図するのは、眼前の情景を視覚的に記録することではありません。むしろ、知覚の残像を写し取った絵画を一堂に会することで、目で見るという行為が空間をかたちづくり、移りゆく風景を切り取った知覚の詩的な記録が構築されているのです。各キャンバスは知覚された季節のインデックスとなり、簡素化したビジョンに空間的な広がりと感情的な豊かさが与えられます。幅2メートルを超える《Spring 7》や《Autumn 13》(2023年)などの大作において、それはいっそう力強く表現されており、現在の瞬間の即時性を増幅させています。スケールは鑑賞者を包み込みながら抑制を維持し、色彩のフィールドを強化し、空間を平坦化し、知覚そのものが主題となるまで広げられているかのようです。こうして、風景に漂う空気を的確に読み取り、要素を絞り込み反復的な表現に裏打ちされたカッツのキャンバスは、簡潔でリズミカルな瞑想を通じて、視覚的な俳句となって刹那を永遠に変えていきます。


「速やかにものごとが過ぎ去る(quick things passing)」カッツの作品世界は、絵画の中での移ろいに関する深い瞑想を体現するかのようです。彼の熟練した筆触は、いっときの優美さを即座に捉え、無作為な仕草で時間を止めます。目まぐるしいイメージの変化と複製に満ちた現代の視覚文化の中で、季節を感じ取る一瞬の感覚を描写するカッツの「Four Seasons」は、鑑賞者を引き止め、気づかせてくれることでしょう。 ー 絵画の力とは、時間をビジョンに昇華する力であり、そのイメージの静止状態(スティルネス)にあることを。


Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York