アニッシュ・カプーア / 遠藤利克 / 大庭大介 / ヴァジコ・チャッキアーニ

2019年3月26日(火)- 4月27日(土)
開廊時間:12:00 - 18:00 ※日・月・祝日休廊

アーティストの直感的な判断や、感情の痕跡を限りなく排除するミニマリズムの表現は、次世代に少なからぬ反動をもたらしました。立方体や球体など無機的な形状を継承しつつも、その中によみがえらせる彫刻の豊潤な力—身体的な触覚性を喚起する素材、色彩のアピール、原始から伝わるかのような熱量や深遠な物語—は、後続の流れを特徴づけてきたと言えるしょう。本展では、そうした影響を感じさせる4人のアーティストを取り上げています。

アニッシュ・カプーア(1954年、ムンバイ生まれ)は、存在と不在、窪みと膨らみ、隠蔽と露出など、対極的な意味を巧みに用い、シンプルなフォルムに深い精神性を呼び起こす多数の作品を発表してきました。代表作に数えられる巨大な皿のような凹型の彫刻作品ーその最新作《Untitled》(2018年)はマットな真紅色にコーティングされ、鑑賞者の視点によってその色彩の深度を変えていきます。瞑想の対象であるかのように静かに佇むこの色面に対峙するのは、ガーゼで覆われた肉塊を思わせるシリコーン製の彫刻です。マテリアルの光沢と脂肪を思わせる白色が混ざり、絵画のように陰影に富んだ複雑な色彩が表現されています。人体の内側に目を向けた生々しい解剖学は白いヴェールに包み隠され、哲学的思考と官能性を写し込むカプーアの手法を象徴しています。

美術における「物語性の復権」を唱える遠藤利克 (1950年生まれ)は、「もの派」やミニマリズムの動向をもっとも批判的に継承した一人といえるでしょう。木材を円環や円筒、柩(ひつぎ)のような直方体に彫塑して燃やすという行為によって、共同体としての人間やその根源にある衝動を喚起しています。水や火などのプリミティヴな要素が、人間の情動の中心に現れる空洞を象徴します。遠藤にとって空洞とは、何もない空虚な状況ではなく、すべてを吸い込む引力と魔力のあるところ、また無限の幻想の根源を意味し、日常の境界線を越えた吸引と放出のちからを孕む場として捉えられています。

本展では、さらに後続の世代となる二人のアーティストが参加しています。アルテ・ポーヴェラを受け継ぎながら、ファウンドオブジェクトに最小限の手を加えることで、出身国ジョージアの社会的な出来事やそのトラウマを静かに語るヴァジコ・チャッキアーニ (1985年トビリシ生まれ) 。絵画における物語性に一定の距離を置きながら特定の制作方法に従い、矩形のキャンバスを観賞者との対話の場ととらえてきた大庭大介 (1981年生まれ) 。多国籍な文化背景と世代的な位相から投げかけられる視点が異なる立場を生み、色彩とフォルムによる無言の物語が個々に深遠な作品世界を醸成しています。