《Fireworks (Archives)》2014年 © Apichatpong Weerasethakul
《Fireworks (Archives)》2014年 © Apichatpong Weerasethakul

アピチャッポン・ウィーラセタクン「FIREWORKS (ARCHIVES)」

2014年9月11日(木)- 10月4日(土)
期間:2014年9月11日(木)− 10月4日(土)

本展の中心となるプロジェクト《Fireworks》は、漆黒の夜に鳴りわたる花火の断続的な音と光を通して、わたしたちの意識から追いやられ、深くに閉ざされた記憶の領域を照らし出す試みです。脳の特定の細胞群に光をあてることで特定の記憶を呼び起こすことに成功した近年の実験結果にも言及しながら、記憶と光の関わりについて探求しています。出身地であるタイ東北地方の歴史、伝承や記録を参照しながら、作家がこれまでも試みてきた夢や眠りといった主題が変奏され、現在制作中の映画《王の墓》(Cemetery of Kings)へと引き継がれていきます。

本プロジェクト初作となる《Fireworks (Archives)》(2014年)は、タイとラオスの国境の町・ノンカイ近郊にあるサラ・ケオクー寺院で撮影されています。信者による労働奉仕と寄付により建立したこの彫刻庭園には、ヒンズー教徒と仏教を融合した数々の動物像が配され、開祖の思想を具象化しています。沈黙してたたずむこれら奇態な群像は、人々の喧騒と陽気な祝祭を暗示する花火に照らされ、プリミティブに鳴り渡る砲音のなか不穏な均衡を生み出しています。

《Fireworks (Archives)》は、私が生まれ育ったタイ東北地方の寺院にある石像彫刻の記録であり、花火による一瞬の照射を受けて幻覚を引き起こす記憶の装置です。バンコクから離れ政治的にも抑圧された東北という不毛な土地が、日常のリアリティーから飛躍した夢へと人々を駆り立てる。抑圧はかずかずの抵抗を生みましたが、ここに現れる気まぐれな彫刻たちもそうした抵抗のひとつなのです。暗闇に照り出される野獣の彫刻たちが役者の姿と混ざり合い、この土地の荒廃と開放とを謳っています。(作家談)