"Spray", 2007, Acrylic on Canvas, 152 x 183 cm
"Spray", 2007, Acrylic on Canvas, 152 x 183 cm

ブライアン・アルフレッド 「Global Warning」

2007年3月23日(金)- 4月28日(土)
期間: 2007年3月23日(金) - 4月28日(土)
開廊日時: 12:00-19:00 *会期中 日・月・祝日休廊
展示作品: 新作アニメーション映像作品、ペインティング、コラージュ作品

21世紀を生きる多くのニューヨーク・アーティストにとって9.11があまりに直接的かつ衝撃的なカタストロフィであったと同様に、当時27才だったブライアン・アルフレッドにとってもこの事件は作品制作の上での大きな転換をもたらすことになりました。それまでアメリカの絵画の巨匠であるエドワード・ホッパー、リキテンシュタイン、あるいはアレックス・カッツの影響を垣間見せる幾分ノスタルジックなトーンのペインティングを制作してきたアルフレッドは、9.11以降、アメリカ、あるいは世界が向き合っている戦争や紛争、テクノロージークライシスといった同時代のテーマをより色濃く取り扱うこととなりました。その表現は巨大な暴力への直感的な恐怖を描くということに始まり、次第にその暴力の背後に隠された深い真実を、映画の俯瞰カメラのような距離感をもってなぞっていく作風として確立されてゆきました。


アルフレッドが扱う問題はアメリカの悲劇であると同時に21世紀を生きる私たちが共通に直面している問題でもあります。世界の発展がもたらす大きな悲劇というものをアルフレッドが特に強く意識せざるを得ない背景として少年期にテレビでリアルタイムに目撃してしまったスペース・シャトル、チャレンジャーの爆発事故があります。アルフレッドが扱うまでもなく、テクノロジーの発展と人類の夢の果てに忽然と立ちはだかる様々な崩落の問題は20世紀から文学、映画、様々なメディアで繰り返し警告されてきたテーマでした。しかしながらこれらの問題は20世紀の負の遺産として今日の私たちに引き継がれていることも事実です。


昨年春のニューヨーク、Mary Boone Galleryでの個展ではチャレンジャーの悲劇やラスベガス近郊の軍事施設(UFO監視施設としても機能)、ロシアアバンギャルドの構図を思わせるような建築物のなどのペインティングにより幾分直接的な表現を避けるかのように私達が暮らす地球のはかなさ、もろさを主題に選んだアルフレッドは、続いて夏のチューリッヒ、Haunch of Venizonでの個展では一転して[Surveillance](=監視)という展覧会タイトルのもとに、インターネットや監視カメラ、個人情報のハッキングなどによって常に第三者に監視されている現代人の問題にアプローチし、大きな反響を呼びました。


カッツやエド・ルッシェが扱い得たアメリカの夢の名残の風景はアルフレッドの絵の中にも確かに残りつつ、我々はそこに強いアメリカの残像や平和への幻想に対する決別の意志を見ることとなります。それはまさに現代に生きるもののみが描くことができる現代の物語なのです。その先にどのような絵が見えてくるのか、それは作者自身にも未だわからず、歴史のみが知ることになるのでしょう。


日本での待望の初個展となる本展は「GLOBAL WARNING」と題され、地球温暖化や自然破壊の問題を政治的な思惑や陰謀のパワーゲームを背景に示唆しつつ客観的に見つめる展覧会になります。意欲的なアニメーション映像作品を中心に4つの大型ペインティング、10数点のコラージュ作品が発表される予定です。