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上:平松実紗《延命措置》2014年、ゴミ、木製パネル、22 x 27 x 8 cm(部分)<br>下:田辺真弓《めまい Vertigo》2014年、ミクストメディア、170 x 75 x 13 cm(部分) 上:平松実紗《延命措置》2014年、ゴミ、木製パネル、22 x 27 x 8 cm(部分)
下:田辺真弓《めまい Vertigo》2014年、ミクストメディア、170 x 75 x 13 cm(部分)

  • 上:平松実紗《延命措置》2014年、ゴミ、木製パネル、22 x 27 x 8 cm(部分)<br>下:田辺真弓《めまい Vertigo》2014年、ミクストメディア、170 x 75 x 13 cm(部分)

ポリモーフィック

2014年7月11日(金) - 8月2日(土)

本展では、今年大学を卒業したばかりの2人の若手作家をご紹介いたします。平松実紗は、ゴミや残飯、フィクショナルな死を連想させる演劇的なインスタレーションを通じて、存在から吐き出されるグロテスクな側面に向き合います。田辺真弓は、疲労したからだの重さをふいに気づかせてくれるめまいの体験を手がかりに、蜜蝋やワセリンなど時とともに溶解する素材を用いた彫刻空間を創り出します。希薄化する身体感覚を呼び覚ます両作家の試みは、マテリアルの溶解と腐朽といった対照的な主題に取り組みながら、時間という不可知なエージェントにその変形を委ねています。

平松実紗(ひらまつみさ)は、1992年大阪府生まれ。2014年、京都造形芸術大学美術工芸学科卒業。自らの死を暗示するプラスチックのおもちゃや人形、雑誌の切り抜きや木製パネルにはりつけたゴミなど、再現的なインスタレーションによって不在の主人公を浮き彫りにし、ベッドや家具に囲まれた架空の恐怖をものがたります。「生きていた記録」をとどめるドローイング小作品には、ボールペンによるキャラクターの模写などあえて初歩的な制作方法を選び、痛々しい自傷行為にもにた介入を加えています。また、保護材としてのサランラップの使用や文字による直截な訴えかけには、同情の表出を読み取ることができます。若年期のトラウマがにじむ心象風景を混沌とした詩情で表す手法は、一種の「アブジェクション(抑圧された闇の排出)」を志向しているようにも見え、不快な自己の一面に向き合うことで身体のリアルを取り戻そうとする実践的な試みをなしています。

田辺真弓(たなべまゆみ)は、1990年大阪府生まれ。2012年、京都造形芸術大学美術工芸学科卒業。2014年、同大学大学院芸術研究科芸術研究専攻 修士課程終了。インスタレーション《Vertigo めまい》(2014年)では、意識が遠のくめまいの体験を、素材の特性に重ねてトレースします。同名の彫刻作品では、水槽の中に層をなす半固形の素材が白濁する意識と重なり合うように溶解し、刻々と形状をかえる一過性のプロセスを創出します。使われているのは医療品や保湿クリームの基剤となる蜜蝋やワセリンで、鑑賞者の傷を和らげるような密やかなジェスチャーが読み取れます。また白い壁面にはモーターによって不規則な動きをみせるキネティック彫刻(《Untitled (-2014)》2014年) が占有し、バランスを失わせる不具合な器官となって展示空間を変容させています。疲労したからだを襲うめまいのように、空間知覚のズレによって「自分の体が今ここにある」ことを強く感じさせる本作は、私たちの意識をあやつる身体的な直感とその仕組みを解き明かそうとするかのようです。

*本展のタイトル「ポリモーフィック」は、同一の組成から多様な形態を生むことを意味します。ここでは、ひとつの制作主題が、時間による変形・変質を介して、多様なメディウムに展開するインスタレーションを示唆しています。

期間:2014年7月11日(金)− 8月2日(土)
開廊日時:12:00 - 6:00pm *日・月・祝日休廊
会場:SCAI THE BATHHOUSE
オープニングレセプション:2014年7月11日(金)6:00 ‒ 8:00pm