名和晃平「Synthesis」

2010年9月24日(金)- 10月30日(土)
期間:
2010年9月24日(金) − 10月30日(土)

開廊日時:
12:00-19:00 *日・月・祝日休廊

展示作品:
彫刻、ドローイングインスタレーション ほか

名和晃平は1975年大阪生まれ。SCAI THE BATHHOUSEで2006年に個展「GUSH」を開催して以来より一層の活躍が目覚ましく、国内外から非常に高い評価を受けています。昨年は銀座のメゾン・エルメス・8Fフォーラムにて個展「L_B_S」を開催。海外では、ブリスベンでの第6回アジア・パシフィック・トリエンナーレに参加し、出展作の写真が展覧会カタログの表紙を飾るなど国際展のハイライトとして大きな注目を集めました。今年は釜山ビエンナーレへ出展、バングラディシュビエンナーレに日本代表作家として参加する他、KDDIの携帯電話iidaのArt Editionsとして携帯のコンセプトモデルを発表、また豊洲街区へのパブリックアート設置など、幅広い活動をより充実させています。その傍らで京都伏見区に旧サンドイッチ工場を改装した創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げ、自身の作品制作の他、アーティストやデザイナー、建築家など様々なジャンルのクリエイターが集ってプロジェクトが進行するスタジオをディレクターとして運営しています。(http://sandwich-cpca.net)


名和の作品はビーズやプリズム、シリコーンオイル、発泡ポリウレタン、グルーなど様々な素材を用いた多様な展開がありますが、ほぼ全ての作品がワンマテリアル・ワンテクスチャーで制作されています。それぞれの作品はBEADS、PRISM、LIQUID、SCUM、GLUE...とカテゴリーに分類され、共通するのは根幹にある「ものの表皮」への意識です。私達が世界を捉えようとするときにまず頼りにするのは「ものの表皮」、つまり「見ること」「触れること」といった視触覚の情報であり、また、あらゆる分野でデジタル化が進みインターネットが浸透した現代においては、世界の表層をすべてデジタルデータに変換し、アーカイブし、加工することが可能です。BEADS、PRISMの作品タイトルに使われているPixCellは、Pixell(画素)とCell(細胞・小部屋)の2つの単語を掛け合わせた名和による造語ですが、インターネットオークションを介してデジタル情報として出会ったモノを実際に質量、質感のともなったオブジェとして手元に取り寄せ、その表面をガラスビーズで覆ったり、プリズムボックスに入れるといったアナログな手法でオブジェの表皮の情報を操作し、新たなデータフォーマットとしての彫刻(PixCell)に置き換えています。


今回のSCAI THE BATHHOUSEの個展は化学用語で"合成"を意味する「Synthesis」をタイトルに、BEADSの新たな展開とドローイングインスタレーションで構成されます。今回発表のBEADSは、私達がコンピューター画面上で画像をコピー&ペーストして行うイメージの加工を実際の彫刻で試みた新作で、リアルとバーチャル、デジタルとアナログの間をイメージや認識がトランスコードされることで所在がゆらぎ、より抽象的なイメージ、新しい感覚が導き出されるようです。また、インクの滴が集積したドローイングインスタレーションにおいて、滴(ドット)は画像を構成するひとつの単位として、イメージに奥行きと広がりを生み出します。そうした映像的な空間が、まるで創造性の基盤に立ち会うかのように私達の身体感覚を静かに刺激するのです。その空間の抽象性、感覚において名和の他の作品カテゴリーの間をつなぐような展示となるでしょう。


来年6月、東京都現代美術館での個展が決定し、ますます今後が期待される名和晃平の本個展をぜひご覧ください。

“PixCell-Double Deer”, h.142 x w.78 x d.71 cm, 2010, photo by OMOTE Nobutada
“PixCell-Double Deer”, h.142 x w.78 x d.71 cm, 2010, photo by OMOTE Nobutada