中西夏之 個展

2017年9月15日(金) - 10月28日(土)

「〔この地表〕はまた水平膜面と呼べる程に揺れやすく破れやすい。私達はそこに位置している。」—中西夏之

2013年に発表された《着陸と着水ⅩⅣ 五浦海岸》(2013年)は、岡倉天心によりわずか4畳半ほどの上に設計された六角堂(茨城県五浦海岸)を模し、同じ寸法の土台に六枚の真鍮板と矩形を構成したインスタレーション作品です。仏堂と茶室を融合した簡素な造りで知られる本堂は、太平洋の水平線を一望しながら茶椀に張った水平面を確認することができる瞑想の場でした。垂直に立ちはだかる絵画の正面性は、一方で不安な水平性を強調しますが、中西は絶対的な水平面を生み出す儀式を、室町時代前期から続く茶の湯に見いだしています。本作は、東日本大震災により流失した六角堂に寄せて制作され、垂直に切り立つ真鍮板と、落下して水平面を見出す砂や小鋼球体が、揺れ動く地盤や風土に呼応していると考えられます。

《着陸と着水ⅩⅣ五浦海岸》は、絵画と向き合う考察の中で生まれた作品です。昨年10月に逝去した中西夏之の仕事を振り返り、本展が本作品を契機に絵画について、絵画の成り立ちに関して考える機会となれば幸いです。

写真撮影:齋藤さだむ